広告 怪談

夜勤警備員が見た老婆⁉とある工場で起きた怪奇現象!

蒸し暑い日のこと、私は久しぶりに時間が合った友人と宅呑みをしていた。

運悪くエアコンが故障していて、狭い部屋にオトコが顔を突き合わせて酒を呑む…。

まったく、暑苦しい事この上ない。

ほどよく酔いが回って来た頃に「何か涼しくなるような話はないのかい?」と友人に聞いてみた。

すると「少し昔の話でも良いかい?それなりに怖い思いをしたことがあるんだ。」と友人が答える。

そしてコップに残っているビールをグビグビと飲み干すと彼は、ゆっくりと語り始めた。

友人の独白

俺は派遣会社に登録して警備の仕事をしてたんだが、これはその時に経験したことだ。

派遣会社から紹介されたのは、地元で有名な企業の工場の警備だった。

流石に大きな工場だけあって、無理のない人員配置で休憩もしっかりとれる良い環境の職場だったと思う。

俺は、主に夜勤で工場内ひとつの棟の見回りをすることになった。

俺自身、他人とのコミュニケーションは苦手なので、ひとりで決められた場所を巡回する業務は、正直ありがたかった。

勤務について数日は、何のトラブルもなく平穏に過ぎていった。

他人とのかかわりが少なく、休憩や仮眠がしっかりとれる環境に満足していた。

それが、一変するのは職場内での配置変更があった時からだ。

なんでも、新卒の若い警備員が突然退職したらしい。

その警備員が巡回していた棟で、人員が不足したとのことで急遽、移動する事になったのだ。

同じ工場内の建屋だけあって棟のつくりは基本的に同じで、少し古さは感じるものの違和感なく巡回できた。

問題が起きたのは、仮眠の時間だった。

通常は休憩室で食事や仮眠をとるのだが、この棟には休憩室がなく今では使われていない古い応接室で、それらを行うよう指示されていた。

休憩時間になり、指示された応接室に向かう。

重い手応えと共に、ギギギと軋むような音を立ててゆっくり開いていく応接室の扉。

電気をつけると、使れくなってからも清掃はしているようで室内は小奇麗に整頓されているのがわかる。

俺は軽く食事をとり、ソファーで眠ることにした。

それなりに疲れていた私は、沈むように眠りに落ちていく。

どれくらい時間が経過したのだろう耳もとで誰かがブツブツとつぶやいている。

段々と意識が覚醒していくにつれて、言葉がカタチを作り意味を持ち始める。

『・・・これは、お経か?』

そのことに気が付くと同時に、纏わりつくように線香のニオイが漂っていることにも気が付く。

まだ、ぼんやりする頭で考える。

『なぜお経?なぜ線香のニオイが?』

疑問と共に覚醒する意識!

目を開こうと考えた瞬間、何かが俺の上に落ちて来た⁉

ドス!ドス!ドドド‼

凄まじい衝撃に慌ててカラダを起こすとそこには、老婆の顔がありこちらを憎々し気に睨んでいる。

しかも、ただの老婆ではない、手が足が、胴体がバラバラになっているのだ!

そして、バラバラの老婆がワタシのカラダのうえで跳ね回る。

「うわぁぁぁ!」思わず悲鳴を上げ、ソファーから飛び起き応接室から逃げ出した。

しばらくの間、トイレで震えていたものの何とか落ち着きを取り戻す。

冷静になると『あれは夢だったのでは?』と思い至り、慌てふためいていた自分が急に恥ずかしくなってくる。

すっかり落ち着きを取り戻した俺は、応接室に戻るが当然、老婆の姿はどこにもない。

やはり夢だったようだ。

その日は、取り敢えず時間まで勤め上げたものの、どうしても老婆の件が気になってしまう。

俺は、帰宅する前に上司と話をしてみることにした。

老婆の話をすると、はじめは素知らぬ顔をしていた上司だが、俺がしつこく食い下がると苦々しい顔を見せて語り始める。

「老婆は兎も角、あの棟では結構な頻度でおかしなことが起こるんだ…」と呟いた。

上司の表情と言葉から色々なことを察してしまった俺は、それからしばらくして派遣会社を辞めた。

そこまで喋ると、再びビールに口をつける友人。

「しかしあれは何だったんだろうなぁ。俺の知る限り老婆に関する事故なんかはなかったはずだけどねぇ」

何とも言えない表情でつぶやく友人に私は答える。

「あの工場、むかしは集合墓地だったらしいぞ…」

顔を見合わせる2人。

取り敢えず背筋はばっちり冷えたので、ありがたいと思うことにするとしよう。

    -怪談