未確認生物(UMA)といえば、ビッグフットやチュパカブラのように、鋭い牙や爪を持ち、人間を襲うかもしれない恐怖の対象として語られるのが常ではないでしょうか。
しかし、21世紀のネット社会は、全く新しいタイプのUMAを流行させました。
その生物は、人を襲うどころか、自分の足で歩くことすらままならないように見えます。頭もなければ腕もなく、ただ白い2本の足だけで、夜の庭をトコトコと横切っていく奇妙な存在。
アメリカ、カリフォルニア州で監視カメラが捉えたその姿は、恐怖よりも先に「何これ?」という困惑と、ある種の「愛らしさ」を人々に与えました。
今回は、ネット界隈でカルト的な人気を誇る癒やし系(?)UMA、「フレズノ・ナイトクローラー(Fresno Nightcrawler)」の正体に迫ります。
フレズノ・ナイトクローラー (Fresno Nightcrawler) とは?

「フレズノ・ナイトクローラー」は、その名の通りアメリカ合衆国カリフォルニア州フレズノ市周辺で目撃報告がある未確認生物です。
そのユニークすぎる外見から、インターネット上では親しみを込めて「歩くズボン(walking pants)」や「動く白いパンツ」などと呼ばれています。
他の多くのUMAが持つような生物学的なリアリティや、モンスターとしての恐怖は一切ありません。
「ただそこにいて、歩いているだけ」なのに、一度見たら忘れられないインパクトを持つ、非常に珍しいタイプのUMAです。
フレズノ・ナイトクローラーの起源
この生物が世界的に知られるようになったきっかけは、ある一本の監視カメラ映像でした。
2007年の「フレズノ映像」
起源は2007年頃(※諸説あり)、カリフォルニア州フレズノ市の閑静な住宅街にある民家での出来事です。
その家の住民は、夜中になると飼い犬が裏庭に向かって激しく吠え続けることを不審に思い、設置していた低解像度のモノクロ監視カメラの映像を確認しました。
そこに映っていたのは、画面の端から現れ、ゆっくりと庭を横切っていく「白い足だけの何か」でした。
この映像が超常現象を扱うテレビ番組で紹介されると、そのあまりにも奇妙で、かつ作り物めいた姿が大きな話題を呼びました。
以前当ブログで紹介した、人型の恐ろしいUMA「ペール・クローラー(The Rake)」とは異なり、こちらは「映像」が出発点となったUMAです。
フレズノ・ナイトクローラーの特徴

公開された映像や、その後の目撃証言から推測されるフレズノ・ナイトクローラーの身体的特徴は、他のUMAと比べても非常に特異です。
まず、その体長は映像からの推定で約1メートルから1.5メートルほどと考えられています。
体色は白、あるいは淡い灰色をしており、闇夜の中でもぼんやりと浮かび上がって見えます。
そして、最大の特徴は何と言ってもその奇妙な体型です。彼らには、通常の生物にあるはずの「頭部」と「腕」が見当たりません。
非常に短い胴体、あるいは股関節と思われる部分から、不釣り合いなほど長くひょろりとした2本の脚だけが伸びています。
その姿は、まさに「自力で歩き出したズボン」そのものとしか形容しようがありません。
そして、その動き方もまた特徴的で、生物的な関節の動きがほとんど見られません。膝を曲げずに、まるで竹馬に乗っているかのように、左右に揺れながらぎこちなく前進しています。
その不安定な歩き方が「一生懸命歩いている」ように見え、視聴者の心を掴む要因となっているのです。
フレズノ・ナイトクローラーの外見・形状
- 体長は約1メートルから1.5メートルほど(映像からの推定)。
- 色は白、または淡い灰色。
- 最大の特徴は「頭部と腕がない」こと。
- 非常に短い胴体(あるいは股関節部分のみ)から、不釣り合いなほど長い2本の脚が生えているように見え、「歩いているズボン」そのもの。
有名な目撃パターンと「先住民の伝説」との混同

フレズノ・ナイトクローラーの目撃情報は限定的ですが、いくつかの有名なパターンと、広まっている「誤解」があります。
パターン1:すべての始まり「フレズノのオリジナル映像」
伝説の起源となったのは、2007年頃にカリフォルニア州フレズノ市の民家で撮影されたとされる監視カメラ映像です。
ある夜、飼い犬が裏庭に向かって異常なほど激しく吠え続けていました。不審に思った飼い主が、設置していた低解像度の白黒監視カメラの録画を確認したところ、信じがたいものが映っていました。
画面の隅から、白い「足だけの生物」がゆっくりと現れ、膝をほとんど曲げずに、体を左右に揺らしながら庭を横切っていったのです。
そのあまりにも奇妙で、かつチープな特撮のようにも見える姿は、見る者に強烈なインパクトを与え、瞬く間にネット上で拡散されました。
これが「ナイトクローラー」伝説の幕開けです。
パターン2:ヨセミテ国立公園の「親子」
フレズノの映像に次いで有名なのが、同じカリフォルニア州にある世界的な観光地、ヨセミテ国立公園で撮影されたとされる映像です(2011年頃公開)。
こちらの監視カメラ映像には、フレズノのものとそっくりな白い生物が、なんと大小2体、連れ立って歩いている姿が捉えられています。
大きい個体の後ろを、小さな個体がトコトコとついていく様子から、ファンの間では「親子ではないか」「つがいではないか」と微笑ましい解釈が広まりました。
この映像が、ナイトクローラーの「かわいい」イメージを決定づけたと言っても過言ではありません。
(※ただし、こちらの映像はオリジナル以上にフェイクの疑いが強く、後に制作者が名乗り出たという情報もありますが、都市伝説としては依然として人気があります)
パターン3:海外進出?「ポーランドの映像」
ナイトクローラーの目撃はアメリカ国内に留まりません。インターネット上には、東欧ポーランドで撮影されたとされる映像も存在します。
これは監視カメラではなく、手持ちの携帯電話で撮影されたと思われる、非常に手ブレの激しい荒い動画です。
夜の闇の中、ライトの先に、あの特徴的な白い足だけの生物がぎこちなく歩いている様子が短時間だけ映り込んでいます。
もしこれが本物なら、彼らは世界中に分布していることになります。
番外編:類似の目撃談「カーメル・エリア・クリーチャー」
映像ではありませんが、ナイトクローラーと同一、あるいは近縁種ではないかと囁かれる奇妙な目撃談がオハイオ州にも存在します。
2014年、オハイオ州ハイランド郡カーメル近郊で、元海兵隊員の男性が車を運転中に奇妙な生物を目撃しました。
その生物は身長が2メートル以上ある灰色がかった巨人で、「腕がなく、胴体から直接脚が生えているような姿」だったと証言しています。
その特徴がフレズノ・ナイトクローラーと酷似しているため、UMA研究家の間では、両者は同じ種類の生物であり、サイズや体色に個体差があるだけではないかと推測されています。
誤解:「ネイティブアメリカンの精霊」説
ネット上でフレズノ・ナイトクローラーが語られる際、「その土地の先住民(ネイティブアメリカン)の伝承にある精霊である」という説がまことしやかに囁かれることがあります。
しかし、これは具体的な部族の伝承と結びついているわけではなく、UMAとしての神秘性を高めるために後付けされた「ネット都市伝説」である可能性が非常に高いとされています。
現時点では、明確な民俗学的根拠は見つかっていません。
フレズノ・ナイトクローラーの正体

フレズノ・ナイトクローラーの正体については、決定的な証拠はないものの、いくつかの説が存在します。
なかでも、最も現実的で支持者が多いのが「フェイク説」です。
その単純な形状や、関節を曲げずに左右に揺れながら進む不自然な動きから、糸やワイヤーで吊るされた人形(マリオネット)である可能性が非常に高いと指摘されています。
白い布で作ったズボン状のものを、画面外から操作するトリックは比較的容易に再現できることが、検証番組などでも示されています。
一方で、オカルト的な解釈を支持する層からは「エイリアン説」や「未知の生物説」も根強く唱えられているのも事実です。
地球上のいかなる既知の生物にも似ていないその姿は、宇宙人や地底人、あるいは異次元からの訪問者ではないかという想像を掻き立てます。
また、一部で囁かれる「先住民の伝承説」ですが、これは具体的な根拠がなく、後付けされた都市伝説である可能性が高いとされています。
似たような岩絵が存在するという主張もデマであることが指摘されています。
なぜフレズノ・ナイトクローラーは愛されるのか?
前回の記事で紹介した「クローラー(The Rake)」が「不気味の谷」現象によって根源的な恐怖を呼び起こすのに対し、なぜナイトクローラーはこれほどまでに愛されているのでしょうか?
最大の理由は、その「無害そうな見た目」と「弱々しさ」にあると考えられます。
頭も口も爪もないため、襲われる心配が全くありません。
そして、今にも転びそうなぎこちない歩き方は、見る人の保護欲を刺激します。「キモかわいい」という言葉がこれほど似合うUMAは他にいないでしょう。
このキャラクター性はネット文化と非常に相性が良く、TumblrやReddit、TikTokなどを中心に、数え切れないほどのファンアートが投稿されています。
さらに、ぬいぐるみやピンバッジなどのグッズが作られるなど、今やUMA界のアイドル的な存在となっているのです。
まとめ:現代が生んだゆるキャラUMA
この記事では、現代が生んだゆるキャラUMA『フレズノ・ナイトクローラー』の情報を紹介しました。
カメラの前を通り過ぎた「白いズボン」。その正体については、糸で吊るされた人形(マリオネット)を使ったトリック映像であるという説が最も有力です。
テレビ番組の検証企画でも、比較的簡単に再現できることが証明されています。しかし、ファンの間では、もはや「本物か偽物か」はそれほど重要ではありません。
夜中にひっそりと、不器用に歩き回るその奇妙な姿が、現代人の心に「癒やし」と「不可思議なロマン」を与えてくれたことは事実なのです。
フレズノ・ナイトクローラーは、ネット文化が育て上げた、現代の愛すべき妖怪と言えるでしょう。

